価値観とマッチング
現在、日本中には様々な転職サービスが展開されていますが、価値観をキーにしたマッチングシステムを持つ会社は、そう多くありません。本ページでは、「価値のチカラ」の中核を担う価値観によるマッチングを行うに至った背景と、価値観マッチングのメリットについて詳しくお伝えします。 通常、マッチングというと求職者の能力や適性と、企業の仕事内容や雇用条件などを引き合わせることが主流です。価値観という「見える化」しにくい項目については、企業は求職者の自己PRを確認したり、求職者は企業のホームページから何となく読み取ったりといった方法でしか確認できませんでした。
しかし、某大手転職サイトの2015年の調査によると、「自分と同じ価値観を持つメンバーと働くことを基準に職場を選ぶことについて、どう思いますか?」という質問に対して、「とても良いと思う」と「良いと思う」と答えた方の比率は、全体で70%を超えていました。一方、「転職先企業と実際に働いている社員の方の価値観をどのように確認していますか?」という質問に対しては、「面接官との話の中で」と答えた方の比率は、全体で50%を超え、それ以外の方法についてはいずれも20%を切るという状況でした。
つまり、価値観の合う人と働きたいと考える求職者は70%以上いるものの、そのほとんどは、実際に面接に行かないと(書類選考を通過しないと)確認できない状況にあるということです。
当社は、経営コンサルタント業を行いながら、職業訓練の実施校として企業と求職者の双方の採用・教育支援と就職支援に携わってまいりました。これらの経験を通じて感じたのは、経営者と求職者(または既に働いている従業員)の価値観が合ってこそ、事業を推進するベクトルが揃うということです。社内の問題に同じように危機感を感じ、目標の達成に同じように喜び合える関係こそが、企業を発展させるのではないでしょうか。
そもそも価値観とは
「価値観」を国語辞書で引くと次のように記載されています。
つまり、価値観とは人が何に価値を感じるのか、どれくらい価値を感じるのかという判断基準を表します。価値観は、物事だけでなく、自分自身にも向けられるため「どんな自分に価値を感じるか」「周りからどのように思われている自分に価値を感じるか」という判断基準もあるように感じられます。
例えば、仕事一つをとっても、毎日決められた仕事を手順通りにこなせる自分に価値を感じる人もいれば、新しいことにどんどんチャレンジする自分に価値を感じる人もいます。人それぞれに価値を感じるポイントが違うからこそ、その人が本当に重要だと感じる価値が達成できる企業や職業を選ぶ必要があるのです。
自己概念
米国人キャリア研究家のドナルド・E・スーパーは、職業選択において「自己概念」がとても重要な要素であると述べています。自己概念とは、「自分は何者であるか」「どういう存在であるか」という自己イメージのことです。具体的にいうと「何が好きで嫌いか」「どんなことを楽しいと感じるか」「自分は引っ込み思案である」といったものを指します。
また、自己概念には、「肯定的自己概念」と「否定的自己概念」とがあります。肯定的自己概念が増えると、人は積極的になり、未知の課題をやり遂げようと動機づけるエネルギーになります。一方、否定的自己概念が増えると、自尊心が低くなり、未知に対して恐れ、消極的で意欲も低いものとなります。肯定的自己概念を「推進力」、否定的自己概念を「抑止力」と言い換えてもよいかも知れません。
自己概念の形成
それでは、自己概念はどのように形成されるのでしょうか。自己概念は、「自分で自分をどう見ているか」「自分はどう見られたいか」「他人は自分をどう見ているか」などによって形成されているといわれます。そのほか、自己認知が統合され一体化されたものとも言われています。認知とは、自己が知覚したもの、観察したもの、印象づけられた映像を言い、具体的には「眼鏡をかけている」「仕事ではよく話す」「日本語を話す」などを指します。
当社では、知覚した自己認知がどのようにして肯定的/否定的自己概念として蓄積されるのかについて「価値観」が影響しているのではと考えました。例えば、「仕事ではよく話す」と自己認知したとします。これ単体では、肯定的とも否定的とも言えません。誰かと比較して口数が多いと感じているだけです。この認知に対して、「仕事ではよく話す」自分に価値を感じるかと考えたときに、肯定的か否定的かの自己概念としてストックされると考えたのです。つまり、自己認知を自己概念にストックする際に肯定的か否定的か振り分けているのが、自身が持つ固有の価値観というわけです。
職業選択の方法
それでは、職業を選択するにはどのような要素が必要なのでしょうか。
まず前提として、明確で現実的な肯定的自己概念を持つことが重要です。明確とは、自分で自分がどのような人かわかっている状態、現実的とは、その自己概念が空想や思い込みで作られたものではなく、周りから見ても確かにその通りだと思える状態であることです。これは、様々な経験をしたり、キャリアコンサルティング(就職面談)を受けながら整理したり、知り合いに自分のことを話して改善点を指摘(フィードバック)してもらったりすることで明確になります。当社の職業訓練では、3か月をかけて「自身の否定的な自己概念を克服するための目標設定」や「肯定的な自己概念を増やす体験型ワーク」を行っています。職業訓練の受講生の皆様は、毎日自分を見つめなおすことで徐々に肯定的自己概念が増えていることを実感しておられます。
そして肯定的な自己概念を持った上で、「自分の能力(もっとも得意なこと)」、「興味(もっともやりたいこと)」、「価値(本当に重要だと思っていること)」を整理して、それらを実現できる職業(職種)が何か探求することで、理想の働き方に近づくことができます。当社でも「能力」「興味」「価値」の切り口で就職支援を行っていますが、これらは肯定的自己概念から抽出されます。自己概念は価値観のフィルターを通った自己認知で形成されているため、似たような経験を持っていたとしても、価値観が違えば「能力」「興味」「価値」の結果は大きく異なります。
そこで、当社の職業訓練では、一般的なキャリアの振り返りの他に「価値観」の振り返りを行うようになりました。この価値観の振り返りが企業や職業選びに非常に有効であると感じたため、このたび「価値のチカラ」を開設するに至ったのです。
企業の「能力」、「興味」、「価値」
一方、企業にも「能力」、「興味」、「価値」と似た概念が存在します。例えば、能力とは企業固有の強み(製品、技術、営業力など)、興味とは企業のビジョン・戦略、価値とは経営理念となります。これらの源泉は経営者の価値観です。経営者自身が普段どのように行動し物事をとらえているか、経営者の価値観を基にどのように意思決定がなされているかにより、企業の「能力」、「興味」、「価値」が大きく変化します。
つまり、求職者と対比させると以下の図のようになります。
当社は、企業向けの経営支援や社内研修も行っていますが、その中で経営者から次のような悩みをよく聞きます。
先ほど、企業にも「能力」、「興味」、「価値」があると言いましたが、企業もそれらが達成されないと理想の働き方ができないということです。
価値観のマッチング
これまで説明したことをまとめると
そこで、求職者と企業とを、「能力」、「興味」、「価値」の源泉となる「価値観」でマッチングする方法を考案しました。
価値観でマッチングするためには、人はどのような価値観をもって生きているのか、価値観の種類を定義しなければなりません。当社ではコーチングで使用される価値観キーワードを参考に用語のピックアップとカテゴリー分けを行いました。それが以下の「NTCバリューズ」です。
企業と求職者の双方が、同じ価値観キーワードの中から重要だと感じる順にランクを付けることで、今まで目に見えにくかった「働く上で大切にしたい価値観」を見える化しました。これにより、近い価値観を持つ求職者と企業をマッチングさせることができるようになります。
以下がマッチングの例です。
求職者のAさんは、最も大切にしている価値観に「情熱」「チャレンジ」「自己表現」を挙げています。一方、求人企業のB社の経営者は、「完璧」「努力」「創造」を挙げています。募集職種にもよりますが、求職者と企業との価値観が合っていないためマッチングの度合いは低いと考えられます。Aさんが新規顧客を開拓しようときれいな営業資料を作っているところに、やってきたB社の上司に「資料作りもよいが、それより疎遠になっている得意先を回ってきなさい」と怒られてしまうかもしれません。
それでは、AさんとC社であればどうでしょうか。C社は価値観に「情熱」「達成」「チャレンジ」を挙げており、Aさんと共通するキーワードが多く含まれています。これなら、価値観がマッチングしているため、互いの仕事の考え方は近いと考えられます。同じくAさんが、営業資料を作成していたら「チャレンジすることは結構!その代わり今月の目標を達成できるように意識するんだよ」とC社の上司が励ましてくれるかもしれません。
さらにマッチング精度を高める方法
当社では、上述の価値観キーワードによるマッチングだけでなく、様々な方法で企業と求職者の価値観を確認し合える方法をご用意しています。
①価値観マッチングの確認登録している求職者と求人企業は、気になる求人(または求職者)を見つけられれば、簡単に価値観のマッチングを確認することができます。「マッチングを確認する」をクリックするだけで自身と相手の価値観のランキングが対になって表示されます。まずは何度か試しに行ってみてください。価値観が近い位置にある場合はキーワードが赤く表示されるため、マッチングしているかどうかが分かりやすくなっています。
②会社見学・インターンシップ求人企業は、求職者の会社見学やインターンシップを受け入れるかどうかを選ぶことができます。お互いが面接以外の場で出会うため、企業にとっては求職者の人柄を知ることができ、求職者にとっては職場や企業の雰囲気、働いている人の価値観を知ることができます。求職者の方は、自分と価値観の近い企業が会社見学・インターンシップを受け入れていれば、ぜひチャレンジしてみて下さい。
また、求職者が企業の価値観をさらに理解するためのサービスとして以下の2つがあります。
①企業インタビュー当社担当者が企業を訪問し、経営者の方へインタビューを行います(登録直後の企業などはインタビューが実施されておらず表示されない場合があります)。インタビュー記事は求人情報が掲載されているページから確認することができます。企業としてどんな経営理念や方針を持っているのか、どんな価値観を大切にしているのか、ビジョンや強み、求める人物像など企業全体としてのベクトルがどんな方向へ向かっているのかを見ることができます。
②先輩社員の声企業全体だけでなく、配属される職場の従業員の声も掲載します。先輩社員がどのような思いをもって働いているのか、どのような価値観を大切にしているのかを知ることができます。職種や配属先によって感じられる喜びは様々ですが、先輩社員の声を読みながら、仕事でやりがいをもって働く自分を想像してみてください。
さらに、求人企業が求職者の価値観をさらに理解するために、2つのサービスをご用意しています。
①キャリアコンサルタントの所見当サイトへ登録した求職者は、最低1回はキャリアコンサルティング(就職に関する面談)を実施します。その際に面談を担当する当社のキャリアコンサルタントは、第三者の立場で感じた求職者の強み、価値観などをコメントとしてプロフィールに付け加えます。マッチング確認だけではわからない求職者の魅力に気づくことができるかもしれません。
②人材育成のポイント晴れて採用が決まると、キャリアコンサルティング時に確認した採用者による育成のポイントレポートを差し上げます。面接に参加していない現場の教育係にスムーズに採用者を引き継ぐことができるため、教育・定着の効果が高められます。
価値観をマッチングさせる効果
当社は価値観マッチングという手法にこだわっていますが、価値観を合わせると仕事においてどんな効果があるのでしょうか。以下に主な効果を挙げていきます。
従業員のベクトルを揃えるために思い悩んでいる経営者の方も多いと思いますが、従業員が経営者と同じ価値観を持っていると、ベクトルを揃えるのはそれほど大変ではありません。この方法は無理に揃えるわけではなく、もともと近いベクトルを持っている人が採用されるのですから、求職者としても安心して働くことができます。
価値観がわからない、価値観が違うと感じたら・・・
ここまでお読みいただき、求職者にとっては「働くうえで」、企業にとっては「採用するうえで」価値観のマッチングが非常に重要であるとご理解いただけたと思います。
しかし、当社の職業訓練の実績では、こんな事例があります。とある受講生からの相談内容が「学生時代にデザインの専門学校に通ったことがあるが、うまくいかなかった。でも、デザインの仕事があきらめきれない」というものでした。原因は「能力」、「興味」、「価値」のいずれかが足りなかったと考えられます。もちろん、それらの源泉となるデザイナーが持つべき価値観も不足していたと考えられます。
では、どうすれば不足している価値観を補うことができるのでしょうか。